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株式会社 shape the gear
神奈川県藤沢市大鋸1031-15
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UTSUGI

ウツギ

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渡辺 俊介

この事例のコンセプト

「切る」だけではなく「場を育てる」
働く人と訪れる人の会話がやさしく交錯し、古い家具と手仕事の素材が共鳴する美容室の設計。


空間にゆとりを、会話に余白を
オーナーが抱えていた一番の課題は、美容室における「会話の距離感」でした。
セット面同士が近いことで、隣席の会話が気になったり、逆に自分の声が聞かれることにス
トレスを感じることがある。それを解消するために、セット面はわずか2席。
贅沢に空間を使うことで、人と人との“間”を設計しました。
個室のように完全に仕切るのではなく、視線や音が自然に交わらないよう工夫することで、
空間としての開放感は保ちつつ、落ち着いた時間が流れるような場所になっています。
ハンガーラックや荷物置きも各席のすぐそばに設けることで、
バックヤードに預ける必要もなく、個人の居場所としての自律性を守っています。


手触りのある素材、風合いのある仕上げ
内装の仕上げにあたっては、オーナーから「古い家具に合う空間にしたい」
「木や土の素材感を活かしたい」という希望がありました。
壁面には、石膏系の左官材を採用。これは下地ボードに直接塗ることができ、薄く仕上げながらも、
抑え方や撫で方によって質感が大きく変化する奥深い素材です。
今回、塗装屋や左官職人とも密に連携し、色味や表情を何度もサンプルで検証。
クラシックな家具に馴染みながら、決して重たくなりすぎないよう、
落ち着いた色合いの茶と黄色をベースに調整を重ねました。
カットスペース背面の棚やレジカウンター下部には、販売用の商品棚も設けています。
アパレルショップのように“見せる”ことを前提とした什器計画とすることで、
接客の導線の中に自然なプロダクト紹介の流れをつくり出しています。


設計と施工のリズムを整えながら
通常であれば、全体設計をまとめた後に工事へと進みますが、
本案件では時間的制約から、解体・天井の撤去といった初期工事を進めながら、
設計を詰めていく手法をとりました。動かせない壁や水回りの位置だけを早い段階で確定し、
その他の仕上げや寸法、素材の詳細については工事と並行して検討。
この“走りながら整える”プロセスは、オーナーとの関係性と信頼があってこそ成立したものであり、
設計者・施工者・施主の三者の協働によって、柔軟かつ確実な進行が実現しました。


ユニットではなく「場」としての美容室へ
UTSUGIでは、美容室としての収益性や効率を一切無視したわけではありませんが、
それ以上に大切にしたのは、「その場にいることの豊かさ」でした。
商業施設やサロンが多席化・効率化していく中で、少席でも成立し、
顧客との信頼関係に基づいて機能する場の可能性を提示しています。
美容室が“通う場所”ではなく、“誰かに会いに行く場所”として捉えられるようになる。
そのための余白と密度、そして素材と手触りの提案。
UTSUGIは、美容室という形式をひとつの「文化的な装置」として再構成する試みでもありました。

この事例を手掛けた会社の概要

社名
株式会社 shape the gear
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所在地 神奈川県藤沢市大鋸1031-15
外部リンク
代表者 渡辺 俊介 担当者 渡辺 俊介
業種・業態 デザイン・設計&施工・工事
坪単価
建築設計 -

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