愛知県長久手市のロードサイドに計画するカーショールームの建築計画です。

日本のロードサイドには、大きな看板や派手な装飾を施した建物が多く並んでいます。こうした「装飾された小屋（Decorated Shed）」と呼ばれる形式が主流となっていますが、本計画ではそのスタイルを採らず、あえて装飾を排除しています。シンプルな箱型の形をわずかに歪ませることで、ミニマルながら視線を引きつける印象的な建築を目指しました。建物自体がさりげなく広告的な役割を果たす、新しいロードサイドのかたちを提案しています。

デザインの特徴は、シンプルな屋根のかかった箱型の建物に、ほんの少し形のズレや傾きを加えている点にあります。このわずかな変化によって、通りを行き交う人々の目に自然と留まり、記憶に残る存在感を生み出します。派手な装飾や分かりやすいシンボルに頼らず、静かで落ち着いた中にも個性を感じさせる建築を目指しました。

この考え方は、建築家ロバート・ベンチューリが提唱した「アヒル（Duck）」と「装飾された小屋」という2つの建築の分類を参考にしています。形そのものが意味を持つ「アヒル」と違い、本計画はその過剰な象徴性までは求めず、両者のちょうど中間、「アヒル未満」とも呼べる位置づけを目指しています。

控えめながらも見る人の記憶に残る、少しだけ違和感のある風景をつくること。
そして、建物そのものが自然にアイキャッチとなり、街並みに新しいアクセントを加えていくことを目指しています。