大阪・北新地という大人の街にふさわしい佇まいを目指し、
日本料理・かに料理「おくどさん 小柴」の空間は、
過度な演出を削ぎ落とし、“料理と向き合うための静かな舞台”として設計しました。

アプローチから店内へと進むにつれ、外界の喧騒を自然と遮断する構成とし、
素材の質感、照度のグラデーション、動線の間合いによって、気持ちをゆっくりと整えていく体験をつくっています。

カウンターは、職人の所作と料理そのものが最も美しく映る距離感と高さを追求。
天井意匠や間接照明を抑制的に用いることで、視線と意識が自然と手元へ集中する空間としました。
個室においても同様に、閉じすぎず、しかし外を忘れられる絶妙な包まれ感を大切にしています。

木、左官、石といった日本的な素材を基調にしながらも、
北新地という立地に合わせ、端正で凛とした現代性を持たせることで、
接待・会食・特別な時間のいずれにも応える空間へと仕上げました。

料理の価値を最大限に引き立て、
記憶に静かに残る時間をつくる——
そんな想いを込めた、日本料理店のための空間です。