「Slow Life」は、イタリア産ワインとともに気軽に楽しめるカジュアルイタリアンとして、この地域に誕生しました。11席のみのカウンターで構成されたこの空間は、シンプルながらも素材の質感やディテールにこだわり、心地よさを追求した設計となっています。

店舗の中心となるカウンターは、数字の「1」の形を象り、この場所が「地域で一番居心地が良く、美味しい店であること」を象徴する存在としてデザインされている。素材にはスペイン産のモルタルを使用し、滑らかでありながらも手仕事の温もりが感じられる仕上がりに。カウンターの形状が持つ力強さと、モルタルの持つ堅牢な表情が絶妙なバランスを生み出し、訪れる人々を迎え入れます。

内装は、落ち着いた優しい色味を基調としています。壁と天井は、白にほんのり黄色みを帯びた生成色で塗装仕上げとし、過度な演出を排したシンプルな空間に温かみをもたらす。床はモルタル土間仕上げとし、カウンターとの一体感を持たせながら、空間に自然な重厚感を加えました。

ファサードにはアンティーク調の木仕上げを採用し、取手や蝶番には経年変化が楽しめる真鍮を用いることで、時間とともに味わいが深まるデザインとしている。控えめながらも、通りを歩く人の目を引く存在感を放っています。

空間にアクセントを加えるのは、壁面に飾られた4つのハンドメイドのアフリカンプレート。それぞれ異なる表情を持つこの装飾は、職人の手仕事による温かみと、異文化のエッセンスをさりげなく取り入れる役割を担っています。

照明計画は、ダウンライトのみの構成とし、無駄な光を省いたミニマルなアプローチを採用。特にアフリカンプレートを照らすために1列だけユニバーサルダウンライトを配置し、アートとしての存在感を際立たせました。カウンターの「1」の形の上部、大きな面となる部分には、海外製の籐編みのペンダントライトを吊るし、空間に優しくナチュラルなアクセントを加えています。

「Slow Life」は、華美な装飾ではなく、素材の持つ質感と光の表情を最大限に活かしたデザインで構成。カウンターに座り、ゆったりとワインを傾ける時間の中で、心地よい余白を感じることができる空間に。その名前の通り、「スローライフ」の価値を味わう場所として、訪れる人々の記憶に残る店舗を目指しました。