京町家の息吹と現代が織りなす、唯一無二の食空間「一凜」

京都・下京区にひっそりと佇む築70年以上の京町家が、私たちの手によって新たな命を吹き込まれました。伝統の面影を大切にしながら、現代の感性を繊細に融合させた和食店「一凜」。そこは、訪れる人の心を解き放つ、静けさと緑に包まれた特別な空間です。

◆「どの席からも、緑を感じられること」― 五感を満たすデザイン
「一凜」のデザインテーマは「どの席からも、緑を感じられること」
店名”イチリン”にちなみ、各室には一輪挿しがそっと彩りを添え、凛とした空気が流れます。荒れていた坪庭は、丁寧に手を加えられたことで、趣ある和の庭園へと生まれ変わりました。さらに、エントランスや2階の個室にも植栽や中庭を設けることで、店内のどこにいても自然の気配を身近に感じられるよう工夫を凝らしています。夜になると庭が幻想的にライトアップされ、昼間とは異なる表情を見せ、訪れる人を魅了します。

◆伝統とモダンが調和する、洗練された空間美
京町家ならではの風格を最大限に活かしつつ、内装にはモダンな素材をさりげなく取り入れました。カウンターは、スペイン製の特殊モルタルで仕上げ、独特のカラーと表情を生み出しています。照明には、庭の石との調和を意識した石材のものを選び、歴史を刻んだ古い梁や柱とのバランスを大切にしました。一つ一つの素材選びにこだわり、伝統と現代が違和感なく溶け合う、洗練された空間を創り上げています。

◆食と空間が織りなす、至福の時間
1階には、美しい庭を眺めながら食事とお酒を愉しめるロングカウンター席を。2階には、それぞれ趣の異なる予約制の個室（和室8名・洋室6名）を設えました。どの席も、喧騒を忘れ、ゆったりとした時間を過ごすのに最適な空間です。

長年飲食業に携わってこられた料理人である施主様は、器や日本各地の銘酒にも強いこだわりをお持ちでした。私たちはその想いを深く理解し、空間づくりに丁寧に取り入れています。料理人の情熱と、私たちが手掛けた空間が一体となり、訪れる人に至福のひとときを提供します。

◆歴史を紡ぎ、未来へつなぐデザイン
工事にあたっては、老朽化したインフラや解体作業に想定以上の予算と手間がかかりました。しかし、当時の職人の技が残る構造や素材をできる限り活かしながら、安心して永く使える店舗として再生させることに尽力しました。

この場所が、京の街の景色に自然と馴染み、末永く人々に愛されるお店となることを願っています。

ぜひ一度、「一凜」に足を運んでみてください。美味しい和食と、季節の緑に囲まれた空間が、きっとあなたの心を温かく解きほぐしてくれるでしょう。