飲食店開業に必要な保健所・消防署の検査とは?【具体例を徹底解説!】
2017-09-19

飲食店を開業するためには、行政機関から営業許可を受ける必要があります。保健所や消防署などの検査項目は細かく、合格の基準も厳しいため、初めて飲食店を開業するオーナーの中には不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は「保健所と消防署による飲食店開業前の検査」をテーマとして取り上げます。開業前、飲食店に対して行われる行政チェック検査の種類を詳しく紹介するとともに、開業後の検査についても触れますので参考にしていただければ幸いです。
オープン前にある検査と合格するためのポイント
-保健所編-

飲食店の開業にあたり、必要となるのが保健所のチェック。食べ物を提供するために必要な、最低限の衛生環境清潔さを確認するための検査です。保健所からの営業許可を得るための検査は、主に次のような流れで行われます。
- 保健所への書類提出
- 保健所職員の現地調査
- 営業許可証の交付
書類を提出してから現地調査までの期間は長いと1週間以上かかることもあります。再検査になれば開店予定日にも影響しますから、早めに調査を受けられるよう対策を練りましょう。
保健所によるオープン前飲食店立入検査では、主な検査項目が「人」「建物」「設備」のカテゴリに分かれています。それぞれのカテゴリ別に主なチェック事項を確認していきましょう。
■「人」に関すること
保健所立入検査でチェックされる人に関するポイントは、食品衛生責任者を必ず配置しなければならないこと。
食品衛生責任者には、特定の資格を所持しているか、もしくは決まった講習を受講した者だけがなれます。
■「建物」に関すること
保健所立入検査でチェックされる建物に関する項目は、主に次のようなものです。
[店舗の仕切り]
- 住居スペース等、営業と関係ない場所と店舗スペースが完璧に分離されているか
- キッチンと客席が一目でわかる区切られ方をしているか
[更衣室]
キッチンや客席スペースとは別に、着替えをするための部屋が設けられているか
[壁]
- 防火性の高い素材かどうか
- 床に近い場所は耐水性のある素材か
- 汚れに気づきやすい明るい色で、かつ清掃しやすいか
[床]
- 耐水性のある素材かどうか
- 清掃しやすく水はけが良いか
[窓]
害虫やネズミが侵入できないよう工夫されているか
[天井]
配管がむき出しの状態になっていないか(または、保健所の許可範囲のむき出し状態か)
[換気]
- 店舗の換気が十分できる状態か
- 害虫やネズミが侵入できないよう工夫されているか
■「設備」に関すること
保健所立入検査でチェックされる建物に関する項目は、主に次のようなものです。
[給湯設備]
- 必要な調理設備がすべてキッチンスペースにおさまっているか
- 水だけでなく、お湯も出るか
[シンク]
2槽以上のシンクが備えられており、かつ蛇口がそれぞれのシンクについているか
[手洗い場]
- お客様用と従業員用、それぞれが分けられているか
- 蛇口の形はルールに沿った形状か
- 消毒できるものが備え付けられているか
[冷蔵庫]
- 食材の素材に十分な大きさか
- 温度計は備え付けられているか
[食器棚]
- すべての食器を収納できる十分なスペースがあるか
- 戸がついているか
[ゴミ箱]
キッチンの中に蓋のついたゴミ箱が一つ以上あるか
[照明]
- 店内が100ルクス以上の明るさかどうか
- 自然光が十分取り入れられる状態か
[トイレ]
- キッチンと離れた場所に設置されているか
- 従業員の人数に対して適当な数が備え付けられているか
他にも、地域によっては別途規定が設けられている場合があります。管轄の保健所に詳細を確認しましょう。
■立入検査に関するプロの意見
開店前の保健所検査をスムーズに通すためには、内装作りの段階からしっかりと検査を考えた計画を立てることが大切です。当サイトが店舗デザイナーに回答を募る「デザイナーの流儀 」には、プロの意見として以下のようなコメントが届いています。
Q.飲食店の内装の保健所検査では、どのような点をチェックされるのか、何が必要になるか教えて下さい。
回答
「後から指摘を受けると、場合によってはオープン日に許可が間に合わないなどの問題が起こる可能性もあります。そんな問題を防ぐためにも、平面プランが決まったら事前に保健所へ協議に行くコトをお薦めします」(岩本勝也+エンバディデザイン藤岡和真氏)
「細かい指摘事項は、営業される地域の保健所に事前相談するのが確実だと思います」(株式会社プロット佐藤つばさ氏)
保健所の検査は、対応してくれる職員地域ごとに細かい部分が異なるため、A市では大丈夫だったのにB市では通らないということも実はよくあること。図面段階から、事前に保健所に相談確認をしておくとスムーズです。
-消防署編-

飲食店オープン前に、防火管理上問題がないか、消火のための設備は整っているかを確認することも大切。「消防検査(消防用設備等の設置完了検査)」と呼ばれており、次のような流れで行われます。
- 消防署への届け出提出
- 消防署による現地調査(もしくは写真等での確認)
- 検査済証の発行
届出の記載内容が間違っていたり、消防検査をクリアできなかったりすると開業が遅れる可能性がありますので、保健所の検査と同じく、事前にきちんと書類や検査項目を確認しましょう。
■飲食店開業前、消防署に提出する書類は?
飲食店を開業する際、管轄の消防署に提出する書類は主に次の4点です。
[防火対象物使用開始届出書]
- 防火対象物を使い始めることを知らせる届出
- 建物を使用する7日前が提出期限
- 管轄による消防署の実地検査あり
[消防用設備等設置届出書]
- 火災報知器等、消防用の設備を設置したことを届け出る書類
- 設備を改修した場合も、新たに届出が必要
- 管轄による消防署の実地検査あり
[火を使用する設備等の設置届出書]
- ボイラーや乾燥設備など、定められた規模以上の「火を使用する設備」を設置することを知らせる届出
- 設備を設置する7日前が提出期限
- 管轄による消防署の実地検査あり
[防火管理者選任届出書]
- 防火管理者を選任し、届け出るための書類
- 規模により、「甲種」と「乙種」がある
- 建物の収容人数(従業員+お客様)が30人未満の場合は不要
- テナント出店の場合は人数によらず届出が必要
書類にはそれぞれ提出期限があります。また、実地検査の日程等のすり合わせも必要となるため、管轄の消防署に必ず事前相談し、早め早めの行動を心がけましょう。
■設置が義務付けられている設備とは?
店舗には、消防法により「消火設備」「警報設備」「避難設備」の3種類の消防設備設置が義務づけられています。それぞれのカテゴリ別に主なチェック事項を確認していきましょう。
-消火設備-
設置が義務付けられている消火設備と設置の基準は主に次のようなものです。
[消火器具]
[屋内消火栓設備]
- 延べ面積700平方メートル以上で地上1~3階にある店舗は設置が必要
- 床面積150平方メートル以上で地下または4階以上にある店舗は設置が必要
- 床面積150平方メートル以上で無窓階にある店舗は設置が必要
[スプリンクラー設備]
- 延べ面積6,000平方メートル以上で地上1~3階にある店舗は設置が必要
- 床面積1,500平方メートル以上で4階~10階にある店舗は設置が必要
- 床面積1,000平方メートル以上で地下または無窓階にある店舗は設置が必要
- 地上11階以上にあるすべての店舗で設置が必要
-警報設備-
設置が義務付けられている警報設備と設置の基準は主に次のようなものです。
[自動火災報知設備]
- 延べ面積300平方メートル以上で地上1階~10階にある店舗は設置が必要
- 床面積100平方メートル以上で地下または無窓階にある店舗は設置が必要
- 地上11階以上にあるすべての店舗で設置が必要
[ガス漏れ火災警報設備]
延べ面積1,000平方メートル以上かつ床面積(飲食店として利用する部分)500平方メートル以上で地下にある店舗は設置が必要
[漏電火災警報器]
- 延べ面積300平方メートル以上の店舗は設置が必要
- 延べ面積が300平方メートル未満で契約電流が50アンペアを超える店舗は設置が必要
この他、状況によっては「消防機関へ通報する火災報知設備」や「非常警報設備」などの設置が必要となるケースもあります。
-避難設備-
設置が義務付けられている避難設備と設置の基準は主に次のようなものです。
[避難誘導灯]
すべての店舗で設置が必要
[避難器具]
収容人員50人以上で地下または2階以上にある店舗は設置が必要
避難が簡単な場所にあると認められた場合、避難誘導灯の設置が例外的に免除されるケースもあります。また、避難階直通の階段が1つしかない場合は収容人員50人未満でも避難器具を設置しなければならないケースがあります。
消防署の検査では、避難経路や避難口が確保されているかどうかも大切なポイントになります。大幅なレイアウト変更などにならないように、設計段階から消防の条件がクリアできているかをしっかりとチェックしておきましょう。設置基準は細かく消防法の記述には難解な部分も多いため、少しでも悩んだら管轄の消防署に必ず確認しましょう。
飲食店のオープン後にある検査も早めにチェック!

行政によるチェックは、開業後も行われることがあります。
■オープン後にある検査 -保健所編-
保健所による検査では、開業時に確認した衛生設備が適切に維持できているかどうかを確認します。主に次のような検査があります。
一斉監視事業
保健所では定期的に衛生環境をチェックするための「一斉監視事業」を実施しています。時期としては食中毒が発生しやすい夏などに実施されることがほとんどです。届け出時にクリアしていた条件をキープできていればそれほど心配する必要はありません。
臨時検査
飲食店で特に注意したいのが、保健所が行う臨時検査です。食中毒などの事故が発生した場合はもちろんのこと、近隣住民や客からのクレームなども臨時検査が行われるきっかけになり得ます。臨時検査は抜き打ちで行われることも大いにありえるので、調理場などの改装を勝手に行わないようにしておきましょう。
■オープン後にある検査 -消防署編-
消防関連の検査では、防災にまつわる設備が適切に維持できているかを確認します。主に次のような検査があります。
機器点検
消防用のスプリンクラーなどの設備がきちんと電源に繋がれ動作する環境なのか、消防設備が適切な位置にあるかどうかをチェックするのが「機器点検」です。機器点検は半年に1度を目安に行われます。
機器点検では、消防設備士または消防設備点検資格者がチェックして、その内容を消防署に提出する必要があります。消防設備点検資格者などは飲食店経営者でも取得できます。
総合点検
消防設備の総合点検は、実際に設備を動かしてきちんと作動するかどうかを確認するものです。総合点検は1年に1度を目安に行われます。
機器点検同様、消防設備士または消防設備点検資格者がチェックして、その内容を消防署に提出します。
立入検査
機器点検と総合点検の他、消防士による抜き打ちの立入検査が実施されることもあります。
今回は飲食店の開業運営にまつわる行政検査について紹介しました。店舗内装を手掛ける設計事務所やデザイナーなら、地域の保健所の事情もよく知っているもの。開業後の検査で困らないように、注意を払うべきポイントを教えてもらいながら、万全の体制で開業に臨みたいものですね。
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