「A工事」「B工事」「C工事」とは?【知っておきたい飲食店の内装工事の基本】
2018-08-03

飲食店を開業する際、居抜き物件をそのまま使わないのであれば、なんらかの内装工事が必要になります。その際に耳にするようになるのが「ここまではA工事で、ここから先はC工事になります」というように、工事をA~Cに分けて解説する言葉。専門的な用語のため、「実は違いがよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は「A工事・B工事・C工事について知っておきたいこと」をテーマとして取り上げます。それぞれの違いや具体例、退去時の注意点などについて解説しますので、ご参考にしていただければ幸いです。
A工事・B工事・C工事の違いとは?
まず、「A工事」「B工事」「C工事」の違いについて見ていきましょう。それぞれの工事で異なる部分は、主に「誰が業者を選定するか」「誰が業者に工事を発注するか」「誰が工事費用を負担するか」の3つです。簡単にまとめると以下のようになります。

■A工事
A工事とは工事業者を貸主(オーナー)が決め、費用も貸主側が負担する工事のことです。建物の共用部分や構造躯体などを工事するときに行われます。「建物そのものの資産価値に関わる部分」は基本的にA工事の対象だと考えて良いでしょう。
■B工事
B工事とは、工事業者は貸主(オーナー)が指定しますが、工事費用は借主(テナント)負担となる工事のことです。店舗内の空調など、「テナントの専有部内にあるが、建物全体に影響の出る可能性がある部分」はB工事の対象となることがほとんどです。
■C工事
C工事とは、工事業者の選定・発注から支払いまですべてを借主(テナント)が行う工事のことです。店舗内の照明など、「建物の構造や安全に影響が出ないテナント専有部」はC工事の対象となることが多いと言えます。借主の自由度が最も高い工事です。
A工事、B工事、C工事の具体的な対象範囲例
次に、どの部分が「A工事」「B工事」「C工事」に該当することが多いか、もう少し具体的に見ていきましょう。
■「A工事」の対象となることが多い具体的な場所
A工事の対象となることが多い「建物そのものの資産価値に関わる部分」とは、具体的に次のような場所です。
- 建物の外壁
- 建物内の消防設備
- 建物内にあるエレベーター
- 各階の共用トイレ
- 各階の廊下・通路
- 非常階段
これらの場所は工事の手配から支払いまで貸主(オーナー)がすべて行ってくれることが多いため、故障や破損があっても、借主(テナント)側はあまり心配する必要はありません。
■「B工事」の対象となることが多い具体的な場所
B工事の対象となることが多い「テナントの専有部内にあるが、建物全体に影響の出る可能性がある部分」とは、具体的に次のような場所です。
- 店舗内の分電盤
- 店舗内の空調設備
- 店舗内の給排水に関する設備
- 店舗内の防災に関する設備
これらは、使用するのは借主(テナント)であるものの、建物全体の安全に関わる可能性が高い場所です。そのため、貸主(オーナー)が信頼する指定業者に工事してもらうことになります。ただし、工事の手配や支払いは実際に使用する借主が行います。
■「C工事」の対象となることが多い具体的な場所
C工事の対象となることが多い「建物の構造や安全に影響が出ないテナント専有部」とは、具体的に次のような場所です。
- 店舗内の壁紙の貼り替え
- 店舗内の照明器具設置
- 店舗内の什器設置
- 店舗内の電話配線工事
- 店舗内のインターネット配線に関する工事
これらは店舗内だけに影響する工事なので、借主(テナント)が自由に工事業者を選定できます。安く工事してくれる業者に依頼できるのもこれらの場所です。最も費用を抑えやすいと言えるでしょう。
A工事、B工事、C工事の注意点

続いて、「A工事」「B工事」「C工事」それぞれについて注意すべきポイントを見ていきましょう。
■「A工事」の注意点
A工事は、すべて貸主(オーナー)が行う工事ですので、借主(テナント)側が関わる部分はありません。しかし、逆に考えると借主側が関与できない工事になるため、「この部分を修繕してほしい」「ここに異常が発生している」と気づいたら早めに貸主に申し出る必要があります。テナントの入っている階のトイレや廊下に直してほしい部分があったら、速やかに貸主に連絡しましょう。
■「B工事」の注意点
B工事は、借主(テナント)側にとって最も扱いの難しい工事です。なぜなら、「貸主(オーナー)が業者の選定をするが、費用は借主持ち」なので、貸主が値切り交渉に消極的な可能性が高いからです。業者からのアドバイス通りに工事が行われ、費用が思ったよりずっと高額になってしまった……というケースが発生しやすいのもB工事の特徴だと言えます。
あまりに高額な見積もりを出された場合は、借主側が普段依頼している別業者などに同じ工事の見積もりを出してもらい、「他の業者ではこれくらいの価格で工事を行ってくれるようだ」と値段の交渉を行った方が良いでしょう。
■「C工事」の注意点
C工事は、借主(テナント)側にすべての権限がある工事ですので、あまり気をつけるべきポイントはありません。しかし、工事中や工事後にトラブルが発生するといけないので、「どの業者に工事を依頼したか」「どの期間にどの場所を工事するか」などは、あらかじめ貸主(オーナー)に伝えておきましょう。
退去時の原状回復作業におけるA工事、B工事、C工事
「A工事」「B工事」「C工事」の作業区分は、原状回復作業にも適応されるため、退去時にも重要になります。原状回復作業における「A工事」「B工事」「C工事」のポイントを見ていきましょう。
■原状回復作業における「A工事」のポイント
「A工事」は貸主(オーナー)にすべての権限がある工事なので、借主(テナント)はほぼ関係がありません。しかし、共用部を借主側が壊してしまったなどの場合、「A工事」の区分であっても、修理代や作業費用を借主側が負担しなければならないこともあります。注意しましょう。
■原状回復作業における「B工事」のポイント
度々生じるトラブルとしては、「契約上はA工事の範囲のはずなのに、B工事扱いされて費用を支払う羽目になった」というものが挙げられます。B工事は借主(テナント)側が支払いを負担するため、貸主(オーナー)が故意にA工事の範囲をB工事に紛れ込ませてしまったという事例があるのです。違和感を感じた場合は、事前に契約書類をよく読み、貸主と話し合いを行いましょう。
■原状回復作業における「C工事」のポイント
C工事は借主(テナント)側が自由に業者を選定できる工事ですので、最も費用を抑えやすいと言えるでしょう。「B工事」で費用を抑えるのが難しい分、複数の業者に相見積もりを頼むなどして、「C工事」ではなるべく安く原状回復費用を抑えられるよう工夫するのがおすすめです。
「A工事」「B工事」「C工事」の違いについて不安のある方は、信頼できる専門業者に「よくある問題」などについて話を聞くのも効果的。専門家の知恵を借りながら、スムーズに内装工事や原状回復工事を進めましょう。
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